Eno.156 ネヌ・ブランショット

>epilogue

>Day■:■■-■


―――、今から思い返してみても。
矢張り自分は未熟であり不出来であったのかもしれない。かも、と言う割には確信的だ。
私は先輩ほど技術に長けていないし、
人心掌握術も寛容な心もなければムードメーカになることもできない。
私は、不出来で未熟な人間だった。
何時までも先輩の背を追うどころか、先輩の影を踏んで歩く人間であったことには間違いがない。

「頭の痛い話」


でも、だからと――とはならない。
起きた結果も事象もひっくり返る事はないし、仮にひっくり返る様な超常があったとして
それに頼ると言う事はこれまでの過程を踏みにじると言う事。

過程も、それによって起きた感情も結末も決して踏みにじってはいけない。
自分の都合が良いように解釈をするのは楽だけれど、何もかもに対して無礼でしかない。
技術を継ぎ継承を行う『技術者』として、『ネヌ・ブランショット』として。どちらもそう思う。





>Day■:■■-■


夢を見た。
いつかの職場で、いつもの部屋で。
もう今は無い嘗て存在していた日常の風景で。


「あいっかわらず真正面からしかみねーっつぅか、」


見えない顔で呆れた様な声。

「んま今更か。
……なんだよ湿気た顔して。現実か非現実かなんて区別ついてんだろ?」

「はいッス」

「……、」




「ねえせんぱ、」

「ただ、正面ばかり見ても意味は無い。
一点ばかりを見るのは、やや視野狭窄が過ぎる」

「……はい」

「だが、目的意識と成すべきことがあるのなら、多少は話も変わるか」

「……成すべきこと、スか」

「そ。いつも言ってるだろ?『成すべきことを成せ』ってな。
それ一つ・・・・に捕らわれるのはアホの所業だが、見据える先がキチンと見えているなら――何かがつながるかもしれねえ」



「物事と言うのは点と点を置いて、線を引く作業だ。
線を引く間にどれだけ視界を広く、思考を深く出来るかでソイツの器は決まる」

「だから」
「だから、成すべきことを成せよネヌ。アンタは俺様の可愛い後輩なんだからな」




沈む。


「だから、」



>Day■:■■-■


「船旅でもしようかと思ったンスよね」




きっと、先輩は己の後を追い掛ける事を望まないだろう。
けれど、存在に希望を抱くことは許してくれるだろうから。

すっかり煮えた頭と業腹を冷やし癒すためにも。
追い求め過ぎないためにも。




遠く遠くに点を置いて、望むのだ。